相続税ばかりに気をとられると落とし穴があるかもしれない話
相続税について。
死亡者数に対する相続税の課税される件数の割合は2017年で8.3%です。2014年は約4%強であったのと比べると大体倍増しています。これは、2015年以降、基礎控除枠が大幅に縮小されたことによるもので、当時は、相続税がかかるかかからないかな狭間の人たちは、いろんなところに相談をするなど、世間的にも相続税が注目された年でもありました。
それでも、相続税が課税されるほどの資産を持っている方は、約12人に1人の割合で、一般の方からするとまだまだ馴染みが薄い税金だと言えます。
相続税の相談を誰にすれば良いのか。と考えた時、一番最初に浮かぶのは税理士ではないでしょうか。
資産をたくさんお持ちの方本人やご子息は、大体お抱えの税理士さんがいて、当然、相続税の手続きも、お抱えの税理士さんに依頼する予定となっているケースが圧倒的に多いと思います。
税理士は当然税務のプロですので、税金のことなら税理士にお任せする事は理にかなっています。(本当は税理士選びも重要ですがそれはまたの機会に)
それはそれで良いのですが、少し考えていただきたいのは、準備は税金のことだけで大丈夫ですか?という事です。
ネットで、相続対策 と検索すると、節税に関する記事がほとんどです。相続に関して、節税が世の中の関心事なのはよく分かりますが、相続には、税金を払う以外に大事な事がもう一つあります。
それは、分け方 です。
戦前のように、長男総取りでうまくいくケースばかりではありません。
家を出た次男や長女、そして、それぞれの配偶者が口を出してきた場合、たちまち兄弟同士で骨肉の争いに発展してしまうかもしれません。
現代っ子は、兄弟間で結果のみの平等を求める傾向にあります。
最悪の場合、争いが起きたとしても、遺産の内訳が、換金性の高い、現金や上場株式などであったならば、それを分ければ良いだけなので、兄弟間でわだかまりが残ったとしても、物理的には丸く収まります。
しかし、資産の内訳が、不動産や権利など、お金に換えづらいものであったとしたら、兄弟間の争いも長期化する恐れがあります。
100万の現金は均等に何分割もできますが、土地や自社株は、分割する事によって著しく価値を低下させます。
そうならないためにも、相続税以外の対策も、早いうちから始めておく必要があります。
つまりは、
●遺産の行き先を事前に決めておく
●遺産が希望通りに分けられるように準備しておく
こんな事が大切だと思います。
例えば、行き先を決めるのには遺言がいいかもしれません。
希望通りに分けるためには、資産の現金化や代償分割の準備などが良いかもしれません。
その類の準備は、短期間で終えられません。
では、自社株などはどうやって分けたらいいのでしょうか。
特性上、自分の会社の株式は他人にはなかなか売れません。
創業者である親が持っていた自社の株が有ったとして、その親が死んでしまった時、法定相続割合で分けてしまうと、経営に携わっていない兄弟にも渡さないといけない。など問題が発生するかもしれません。
最初は、株が部外者の手に渡ったとしても、結局兄弟なので大きな問題にはならないと思います。
しかし、相続も、二回三回と処理していくうちに、いずれは全く赤の他人が、先祖代々の会社の株を細分化された状態で所有している。なんて事にもなりかねません。
もう、そうなったらお手上げです。
相続は税金の対策だけではありません。
それを踏まえて色々考えてみるのも良いと思います。